乗用和種を探り作出する試みについて

First update: Feb.27.2002
Last revised:May 12.2007

用語:和種=(日本)在来種=(日本)在来馬=Japanese Native Pony=太古からいた日本特有の馬の血統を受け継ぐもの


甲斐の黒駒作出計画 ・ 甲斐の黒駒生産ステップ ・ 北海道和種馬(乗系)の形質保存

-はじめに-

人は用途に合わせ動物を改良してきた。馬も同様である。現在日本では、馬といえば競走馬(サラブレッド)である。しかし、サラブレッドにしても、”速く走る”ということに目的を限定し、人が厳格な繁殖管理をして作り出した一品種である。
われわれは、日本在来種の範囲内での選択育種で、甲斐の黒駒=Kai Pony を一品種として作出、固定しようとしている。

-日本在来種の能力について-

日本在来馬にも乗系(乗馬に適したもの)と駄系(荷物を載せ運ぶのに適したもの)の二つのタイプ(型)があった。

*種馬統制法で絶滅した南部馬(旧南部氏の領地。盛岡地方が中心)には、アイノメ型(乗系)とネンボウ型(駄系)と呼ばれた2系統の馬があったという。

*御崎馬(宮崎県都井岬)は高鍋藩秋月家の乗用馬として管理され、現在もその面影を残していると思われる。実際に御崎馬を使役した古老によれば、農耕にも使用したが、本来は乗馬であるという。瞬発力も持久力もあったという。

*北海道和種=道産子には様々なタイプがある。北海道和種をきちんと乗馬として調教する(たとえば二蹄跡運動くらいまではやらせてみる)という感覚が地元にないので断定できないが、乗系として分類できる型、能力を持ったものがいる。当牧場には、乗系と言うことができそうな道産子がいる。運動が滑らかであり、瞬発力、持久力がある。多くの馬を使役したがこの馬の動きは納得できる。外貌としては、幅が薄く、肢、首が比較的長い。地元の生産者によれば、このタイプの馬は普通の道産子の中から生まれるという。肉市場では、こういう馬は不良品のような扱いであまり歓迎されない。動きやすい体形で運動能力が高いので扱いにくい上に肉がつきにくいからである。北海道和種の遺伝子には、乗系の流れが割に濃く残っていると思われる。

*現存する木曽馬は駄系である。(駄系のしかも過度の近親交配で矮小化した木曽馬を見て、源平争乱時代の武士の馬の能力を論ずる方もいるがどうであろうか。人切り包丁を担いで殺し合いをしているのである。この程度の馬に乗っていたら命がいくつあっても足りない。まして、人殺しの専門家が日夜人殺しの訓練研究をしていた時代である。運動能力の高い馬作りにも高度の技術があったと考える方が自然であり、源平時代に戦で使っていた木曽馬は乗系のものであったと思われる)
現存する木曽馬もトレーニングによってある程度の動きをさせることができる。しかし、乗馬としての”素軽さ”とも言えるものがない。すぐに肉が乗ってくる。”素軽さ”と表現されるような運動能力がなければ乗用馬としては物足りない。木曽馬に残っている特筆すべき形質は周囲の状況に動じない精神力のタフさ、判断力である。

現在、日本には在来種が乗用であるという認識が無い。したがって、どういうタイプの在来種が乗用馬として優秀であるのかという事が明確ではない。北海道和種、木曽馬をベースに和種の遺伝子に潜む乗系のながれを探り出し調教し示したい。

-外貌-

アラブ、アンダルシアン、コネマラ・ポニー、人は能力が高く美しい馬を作ることを目指し選択し残してきた。馬が美しければ乗り手は引き立つ。外貌=見た目=Looksも重要である。USAなどでは、Good Looking Horseを競う品評会があるという。当牧場は山梨県にある。聖徳太子の愛馬、甲斐の黒駒のような青毛のGood Looking Ponyを作出したい。ただし、われわれが和種らしさとイメージする古武士のようないぶし銀の野性味は大切にしたい。

-乗り術(のりわざ)-

大坪流、加賀美流といった特定の古式馬術にこだわらない。多くの文献が残ってはいるが口伝、口伝で肝心なところは不明である。われわれは古式ではなく和式にこだわっている。和式の馬装で和種馬に自然に乗ることができる乗馬術を研究している。これは、往時の和種馬の形、能力を考える上でも重要であると考える。

-現場主義-

まず、自分が納得できる和種の乗用馬を作出することである。それをお客さんに乗ってもらう。多くのイベントに参加、また発表の機会を設け見てもらう。お客さんに、いい馬だ、という評価を得ることで客観性を持つことができる。お客さんに喜んでもらえなければ、すぐに牧場はつぶれてしまう。自己満足でなく、あくまでも馬方として、常に厳しいお客さんの評価に馬も自分もさらされていることが、我々の「馬方としての現場主義」である。

以 上


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