調教

Revised: Dec.19, 2000      木曽馬牧場最新調教方針(19/12/2000)

化骨の話から:骨が化けるのではないのである。胎内での骨は軟骨からできている。しだいに、軟骨にカルシウムが沈着し、誕生に際しては、立って歩けるような骨の形になっている。その後も、骨の中には骨の長さを増す骨髄線という部分が残っていて、軟骨から成る。その軟骨が蹄より肩、脊骨と固まっていくことを化骨化という。これが完成するのが、満5歳、成長の完了である。もっともこれは、競走馬の参考書で勉強したことで、和種馬の場合は、成長が遅く、もう1年くらい見たい。

競技馬は、4、5歳から調教をはじめ、少なくとも4、5年はかかる。ものになった馬が競技に出場するのが、8、9歳から10歳、最盛期は12、3歳どまりである。これも、オリンピックに出るような馬の話。

木曽馬牧場では、馬喰さんが、「乗れるよ」という馬を買ってきたら、3ヶ月くらいで、一応外乗に使える状態までもっていかなければならない。ほんとに、”またげる”だけの馬が来てしまうこともあった。猛獣つかいのような日々もあったのである。年齢不詳の馬さえいたし、肉屋さんから紹介されることだってあった。

懐かしい話である。馬を活用しない保存では、何ら淘汰圧がかからないから、馬はあっという間に原種に戻ってしまう。人馴れしない野生動物に戻っていく(犬もそうらしい)。それはそれでおもしろいのだが、そういう馬を調教するのはきついし、お客さんに安心して楽しんでいただけるという最も大切なところで信用できない。
和種の保存と活用を同じことと考え、牧場で初心者の方にも楽しめる馬を、と営業を続けるうちに、自然とおっとりした人に親しい馬が残っていった。血統の大切さということが話されるようになった。

19/12/2000
話しかけてあげることが大切だと思う。
僕たちだって環境に慣れず、どうしたらいいかわからなくて不安でたまらない時、誰かに話しかけてもらうとずいぶん助かる。
だから僕は、子馬に話しかける。なんであれ、どうしてこんなことをしているのか語りかけながら調教をするようにしている。
馬だって、自分の好きな人から訳を話してもらいさえすれば、いっしょにいてあげれば、どんなに怖くても我慢しようとするものだ。

馬は足が命。
だからとても気にする。人間に慣れさせるために、足を上げさせたり、管やつなぎをなぜてやったり始終してあげるのがいい。

食べることをとても楽しみにしている。いつも人参をポケットに入れて、よく出来た時、がんばって運動した時には食べさせてあげる。

力ずくでやればできないことはない。紅葉台でも初期は、時間もお金も余裕がなかったので、力ずくの調教をしていた。モンゴル人が、2才っ子にいきなり鞍をつけ、乗っかってどこまでも走って行って降参させてしまう。そんなやり方。
でも、今思うと、このやり方では、初心者に楽しんでもらうとか、障害者に安心して乗ってもらうとかできる馬になってくれない。
無理をすると、いつも何かにおびえているか、隙を見つけて裏切ろうとするような馬になってしまう。
自分からすすんで乗り手のいうことを聞くような馬を、僕らは作っていかなければならない。じっくり時間をかけて、一つ一つの事柄を納得させ、馴らしながら調教を進めていかなければいけないと思う。
ただし、人との関係でルール違反をした時は全身で思い切り怒らなくてはならないことを忘れないように。


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福風

どちらがボスだ

なだめすかしていては、新馬の調教はできない。特に未改良馬とさえ言われる和種馬の場合、洋種の馬のように従順な頭に淘汰されていない。原種に近い”知恵ある馬”である。初期調教で、我を張り通させると、 人を下に見るようになり、危険な猛獣になってしまう。馬の方が偉くなってしまうのである。

乗馬中、課題に従わない時は、鞭を使え! 必ず自分に従わせることだ。自分の鞭で馬の個を殺せ。残酷なようだが、これはライディングの根元に関わることである。

その日の課題が終わったら好きなだけ、可愛がればいい。

馬が悪くなるのは、調教のときに、いじめたり、乱暴に取り扱ったりしたからだというが、それは、今、私が言っていることとは、また別の話である。勝負をかけなければならない時期がある。恐る恐るなだめすかしてばかりで、調教が入るのなら、やってみせてほしい。
下品で憎悪に充ちた懲戒は問題外だが、しかるときは真剣にしかることが最も大切であると思う。どちらがボスか、はっきりさせることは、やはり重要なのだ。